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日本国内でも自家用戦車は持てるの? 夢にチャレンジした人たちとその「愛車」
乗りものニュース
結論からいえば、日本で自家用戦車を持つことは不可能です。ところが、あきらめきれず夢にチャレンジした人たちがいます。彼らが作り上げた合法な戦車とはどのようなものなのでしょうか。
男の子の夢? 自家用戦車
戦車は映画やアニメではお馴染みでも、日本で本物の戦車を持っているのは自衛隊だけです。戦車独特の迫力にあこがれる人も多いでしょうが、「自分の物にしたい」という欲求は、プラモデルを作って本物を想像し、本やネットで資料を集めるなどして我慢してしまうのが普通で健全です。
陸自10式戦車(奥)と、「プラモデルを1/1で作る会」によるドイツ軍空挺戦闘車「ヴィーゼル2」レプリカ(手前)(画像:プラモデルを1/1で作る会)。
とはいえ「自家用戦車」というのは本当に不可能なのでしょうか。
結論から言えば不可能です。イギリスなどでは戦車の個人所有が認められており、軍用車払い下げ紹介WEBサイトには戦車というカテゴリーもあるくらいなのですが、日本では法的に認められていません。
しかし日本にも「自家用戦車」は存在するのです。もちろん大砲は撃てません。装甲もありません。つまり残念ながら本物ではありません。ところがエンジンを積んでいて走ります。戦車だって乗りものです、動いてなんぼなのです。
岐阜の「ヴィーゼル」は対空ミサイル搭載仕様
岐阜県の「プラモデルを1/1で作る会」代表の大橋さんは、実寸大「ドイツ軍空挺戦闘車ヴィーゼル2」を作りました。ネットで公開されている実車データと35分の1スケールのプラモデルを入手し、各パーツをノギスで採寸して35倍し作り上げたのです。1500ccのターボディーゼルエンジンと油圧式無段階変速機を搭載し、超信地旋回が可能です。覆帯(いわゆるキャタピラー)は板金構造でゴムを加硫接着という本格派です。
対空ミサイル搭載仕様の「Ozelot(オセロット)」を再現(月刊PANZER編集部撮影)。
茨城県大洗町で開催されたイベントにて(画像:プラモデルを1/1で作る会)。
精密に作られた履帯(画像:プラモデルを1/1で作る会)。
言葉にすると簡単ですが、実際にはCADを駆使した構造と強度計算、設計とそれを具現化する確実な工作技術が揃ってできあがったものです。車輪はレーザーで切り出されたパーツを組み合わせており、覆帯は鉄板と丸パイプを板金作業でひとつひとつ組み立てたものを130個使用しています。
この戦車は「ヴィーゼル2 Ozelot(オセロット)」という対空ミサイルを搭載したバリエーションを再現していますが、実際に後部のミサイルランチャーも動きます(ミサイルは発射できません)。ヘッドライトやウインカーは実物で作動します。塗装やデカール類も実寸大プラモデルらしくこだわり、覆帯は本物のように錆びている様子を再現するエイジング塗装までする芸の細かさです。
聖地・大洗にはイタリアの「豆戦車」が
茨城県大洗町といえば『ガルパン』ことアニメ『ガールズパンツァー』の「戦車道の聖地」でもありますが、「日照戦車」代表の照沼さんがイタリアの軽戦車CV-33を作ってしまいました。実車は第二次世界大戦期に生産された小型の「豆戦車」で、「この大きさなら作れそうだ!?」と思ったのが始まりだそうです。
日照戦車によるイタリア軍軽戦車CV-33(画像:日照戦車)。
CV-33は豆戦車と述べましたが、それでも実車の三面図を集め丹念に寸法を起こして作り上げられ、堂々とした迫力があります。車体は板金で溶接して作られています。農機具であるコンバインのエンジンを積んだひとり乗り仕様で、操縦席には操縦レバー、アクセル、計器類が備えられ自走します。
側面より。実車の三面図を集め作り上げたという(画像:日照戦車)。
後方より(画像:日照戦車)。
ベースは稲刈り用のコンバイン(画像:日照戦車)。
覆帯は板金で作り、1枚ずつピンで繋いであります。プラモデルでも連結して組み立てる覆帯は面倒ですが、実寸大だと鉄の固まりでずっと重たく、これを組み立てるだけでも大変です。また走らせるには一番の壊れやすい部分でもあります。自家用戦車を上手く走らせるには覆帯を頑丈に作り、馬力の大きなエンジンを積むことですが、一方で重くなって壊れやすくなります。このあたりのバランスの難しさは本物の戦車とまったく同じです。
履帯はほぼホンモノ、御殿場の旧陸軍九五式軽戦車
静岡県御殿場市にはカマド自動車社が保有する旧日本陸軍の九五式軽戦車があります。「防衛技術博物館を創る会」の代表でもある小林社長が、オーストラリアから輸入した映画用小道具をリファインしたものです。
カマド自動車の旧陸軍九五式軽戦車(月刊PANZER編集部撮影)。
映画用小道具とは言っても外見は立派に戦車です。輸入手続きにはひと騒動あったそうです。こちらもフォードのガソリンエンジンとオートマチックトランスミッションで自走します。覆帯は本物の九五式軽戦車から型取りした鋳型から作られた、ほとんど本物と同じもので強度も充分です。
しかし細かいパーツ類は映画用小道具だったこともあり、日本に到着した時あまり本物らしく見えなかったそうです。そこで小林氏はいろいろな資料を集めて細かな改造を続けて、塗装をし直しライトや名盤に至るまでオリジナルに近いものに仕上げていきました。イベントに擬装した姿で登場しましたが、本物と見まがいます。
オーストラリアから輸入した当時のようす(月刊PANZER編集部撮影)。
イベントなどで展示されることも(月刊PANZER編集部撮影)。
イベントにて、擬装した様子(月刊PANZER編集部撮影)。
紹介した3台はいずれも全幅2m以下、全長5m位に収まる小型サイズで「軽戦車」と呼ばれます。自衛隊の本物の74式戦車は全幅3.18m、全長6.7mですのでひと回り以上小さいことが分かります。「自家用戦車」のポイントは大きさと重さで、所有者に聞くと、どうせならもっと大きい戦車が欲しいのはヤマヤマだそうですが、実際に所有するには軽戦車のサイズが地方の個人宅に「ちょうどいい感じ」とのことです。確かにこの大きさなら通常の積載車で輸送できます。とはいえ都会のマンションの駐車場にはちょっとキツそうです。
日本にも「自家用戦車」はあります。これも「日本のものづくり」のひとつの形です。オーナーさん達はまだ完成したわけではなく、手を入れたい箇所がたくさんあると口を揃えます。やっぱり「男の子」は「夢が形になってゆく」過程が楽しいのです。
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